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肺腺癌培養細胞 A549を用いた非動物実験による 火災ガス毒性評価方法の確立
0小西忠司(大分高専) 宮崎由李恵加藤悠人小原裕治(大分高専・学生) Deve1叩 mentof加 vi;的 toxicityme也 odsforfirecombustionproductsbyusmgA549
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1. 緒 言 近年,住宅の高気密高断熱化が普及しており,一端,
火災が起きると低酸素濃度環境が形成される.その結 果,居住者は, OA機器に使用されるアクリル樹脂, ABS樹脂,寝具や座布団に使用されるポリウレタンや 新建材から発生した一酸化炭素,シアン化水素,塩化 水素,ホルムアノレデヒド,アンモニアなど多種多様の 有毒ガスに暴露される(1).さらに,消火活動による鎮 火後,消防職員が,くん焼燃焼によって発生した上述 の有毒ガスに暴露される危険性がある.火災ガスの毒 性評価は,従来までラットやマウスなどの動物実験を モデル火災建物あるいは燃焼装置を用いて行われてき た.しかじ,昨今,欧州iを中心に動物実験を廃止もし
くは最小限に抑制する世界的な動きがある向.また, 近年,大学でも,熱傷や有毒ガスを動物に負荷する実 験は,動物虐待として規制レベルが強化されている.
本研究は,気密性建築物火災等で起こる低酸素濃度 環境で生成する火災ガスが,居住者や消防職員に与え る生理的影響をセノレライン細胞により構築した呼吸 器・代謝系の非動物実験 (inv.i的 cyωtoxicity) におい
て明確にし,火災ガスの基礎的毒物性 (Basa1 cytotoxicity,以下 B.C.という)の評価を行う. 2.実験方法
最近の研究では,細胞を使った基礎的毒物性(加viか, O B.C.) はヒトへの毒性予測に有益であると報告されて いる.数百種類の化学物質に対して的 vitroB.C.と醤歯 類の LD50 (50%致死)は良い相関が得られているο) 本研究で用いた細胞は,癌化したヒト肺胞基底上皮細 胞 A549 ( 宮 崎 大 学 仙 波 和 代 博 士 よ り 供 与 ) で 加 νi的 B.C.に使用されている (4).-80<tに保存した A549を PBS
で 3回洗浄,基礎培地に懸濁して 37t,5%C02環境下 で培養する.基礎培地は,Eagle(ニツスイ 680541)に 牛胎児血清 10% (CCB171012) メイロン1.5% (日本 薬 局 方 静 注 7%),L-グ ル タ ミ ン 5%(和 光 純 薬 工 業 2707), ペニシリン 0.5% (明治製菓注射用ペニシリン Gカリ ウム 10万単位)を添加して作製した.Fig.1に基礎培 地に懸濁した A549細胞を示す.細胞浮遊液を IX 104cels/cm2 に調整して 21 枚のディシュ (NUNC 15306) に播種する.播種直後に 3枚のディシュから 細胞を回収し,遠心して浮遊液を 50μ1に調整し,血 球計算板に入れて数える.また, 96穴マイクロプレー トの各ウェノレに 100凶ずつ播種し、 CO2インキュベー ターで前培養する.細胞増殖/細胞毒性測定用試薬(同 仁 CCK-8341-07760を各ウエノレに 10凶添加する.C02 インキzベーターで 1時間呈色反応を行い,マイクロ プレートリーダーで 450nmの吸光度を測定する.
試験材料として,シアン化水素発生源であるポリワ
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レ タ ン ( M & S 0 7 - 2 5 4 ・ 0 5 ) , ポ リ ア ミ ド ( M & S 0 7 - 2 4 8 - 0 5 ) , ポリアクリロニトリノレ(Kno白水槽キレイ), .AsS樹 脂(M&S07之52-05) の 4種,生分解性プラスチック のポリ乳酸(テラマックボディタオル)を選定した.
卓上焼却炉(三紳工業 AG-2) に試験材料を入れて 一定温度で加熱する.燃焼ガスは,冷却管を通り ,C01 インキュベーターに設置した角形ジャー(スギヤマゲ
ン A-10) に導く.角形ジャー内部には培養ディシュ に播種した A549が設置する.比較対照として CO2イ ンキュベーターに火災ガスに暴露されない培養ディシ ュの A549を設置する.シアン化水素は,ガスクロマ
トグラブ(島津, GC-2014B) FTD検出器で測定する. 実験者の安全を確保するため,実験装置をドラフトチ ャンパー内に設置,さらに実験者近傍にシアン化水素 濃度計 (MKSci.Min迅仏XXPHCN),防毒マスク(興 研製, HV22型青酸ガス用吸収缶)を設置した. 3.実験結果
Fig.2に火災ガスに暴露されていない A549の増殖曲 線を示す.横軸に培養日数,左縦軸に細胞数,右縦軸 にCCK・8による吸光度を示す.A549は,誘導期 0~3
1 対数増幅期 3~15 日であった.この結果から,今
後の火災ガス実験において暴露期間は 14日とする.卓 上焼却炉でポリウレタンを燃焼させた結果,シアン化 水素の発生が 30ppm以上であることをシアン化水素濃 度計で確認した.今後,本実験装置で A549に対する 火災ガス暴露実験を行い,火災ガスに暴露されていな い A549の増殖曲線との比較を行う.
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本研究の一部は平成 22年度科学研究費補助金の研究 助成 (20510157)を受けた。ここに記して謝意を表す。 5.結論
ヒト肺胞基底上皮細胞 A549による火災ガスの基礎 的毒物性の実験方法を試みた.細胞アッセイを用いて 火災ガスを暴露していない細胞増殖曲線が得られ,ワ
レタン燃焼によりシアン化水素の発生が得られた.今 後,本実験装置を使用して基礎的毒物性評価を行う 参考文献
(1)中毒百科事例・病態・治療
(2)火災便覧第 3版,第 3章火災と生理・心理
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(3)F.A.Barie,inviか
(4)F.Les阻止 J.AplToxicol.2006Mar-Apr;26(2):9-14.
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