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   3786 電極を覆う石炭スラグ層の通電現象とアーク放電特性
のと異なる構造のアーク放電をしている. TV画像から求めたアーク面積は,アークスポット
の輝点の投影面積であるが,先の 2種類のスラグに対 するものは,スラグ表面にアークが点ずるのに対し, K 2 S 0 4 10 % 添 加 の も の は , ア ー ク の 輝 点 の 面 積 が , 他 の も の に 比 し て 1/2'"'-'1/3 程 度 で あ る が , 深 さ を 持
っており,表面に形成される小孔全体からアーク放電 が行われているような形態のアークとなっていること がわかった.
アーク面積から求めた電流密度は 10'"'-'40A/cm2の オーダであり,電極面積基準の電流密度の 50'"'-'10倍 の値となっており均一放電領域の最大電流密度 0.04A/cm2に比して,いかに大きな電流を通電でき るかを理解することができる.乙の結果は,アーク放 電モデルの構築応必要な,アーク面積基準の電流密度 を与えた初めてのものであり,これをもとに,新しい ア)クモデルを提案することが可能となる.
一方,陽極においては,陰極と異なり,アークがス ラグ表面ではなく,スラグ層の内部に生じているよう な輝きを見せ,陰極のように輝点ではなく,スラグ面 全体が大きく,かつにぶく輝く.このため,図 7で示 したようなアーク面積基準の電流密度を求めることは
不可能である.さらに電流密度を増加すると,先述し た電極金属材料との電気化学反応の結果,多量の酸素 ガスの発生によって,スラグと電極面が分離し,かつ, 通電によるジュール加熱によって,スラグ層全体が溶 解し,沸とう的な状態を呈する.電流密度をさらに上 昇すると,気体発生のため,スラグが押しのけられ, 電極表面が露呈する.このような現象は陰極には生ぜ ず,陽極独特のものである.
料と電気化学反応を起し,ガスを発生する.この際陽 極材料は侵食をうける.
(2) 分極現象の生じる時定数は早く,約 10'"'-'30 秒の間であり,分極により陰極ではスラグと電極の接 合 が 析 出 し た 金 属 に よ り 確 実 に な る た め , 通 電 が 容 易
に な る . 一 方 陽 極 で は 電 気 化 学 反 応 に よ り 生 じ た ガ スが,スラグと電極との接続を阻害するため,通電特 性が劣化する.
(3) 陰極および陽極に出現するアーク放電の挙動 に関し,スラグに含まれるカリウムおよび鉄の分率を K2S04,Fe20aの添加量により変化させた.その結果, Fe20a5%のものは,フライアッシュから生成された スラグとほぼ同様の電流密度を示すのに対し, K2S04 10%添加のものでは,約 5倍に増加した.
(4) アーク放電時に陰極スラグ表面に生じるア) クスポットの面積を基準とした電流密度を求めた.フ ライアッシュ, Fe20a5%のものは3ζ の順序に, 9 A/cm2,12A/cm2であるのに対し ,K2S0410%添加 のものは, 40A/cm2 と大きな値を示した.これが,ア ークスポットの構造が変化したことによることを述べ た.
(5) 陽極のア)クは,陰極のようにスラグ表面に 生じるのではなく,スラグ層内部に生じ,大きくかつ にぷく輝いており,陰極におけるアークと本質的に異 なっている.
本研究で用いた電極の基本構造は,本学大学院生藤 原尚樹,黒木裕昭,学部学生佐々木宏一諸君の研究ノ ートに負うところ大である.また,本研究の一部は, 昭和 60年度文部省科学研究費補助金〔エネルギー特別 研究(1),課題番号 604063)によっていることを付 記し,感謝の意を表す.
文献
(1) Rolina,R.andLarsen,R., 17thEngineringAゅects01 MHD,(1978),C.6.
(2) Hosler,W.R.,ほか2名,7thInt.ConfonMHDElect. POω.Gen.,1,(1980),20.
(3) Koester,J.K., ibid,I,(1980),48.
(4) 高野・ほか 3名,電気学会新・省エネルギー研究会,
ESC-85-1,(昭 60),1.
(5) 森・ほか 2名,機論, 37-301(昭 46),1716.
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除 4.結 目閲
以上石炭燃焼 MHD発電において重要な電極を覆 う石炭スラグを通しての通電現象とアーク放電特性に
関し,実験的研究を行い,次の結論を得た.
(1) 陰極および陽極面上のスラグ層では,通電に より分極現象が生じる.陰極側では,スラグの電極面 側に, K,Naなどのイオン化傾向の大きな金属が偏 析し,陽極では,これらの成分はスラグの表面に偏析 する一方,電極側に移動した負イオンが,金属電極材
呈A








































































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