Page 153 - Tsubomi
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    ムアングン村(チェンマイ県ハーンドン郡)
ムアングン村はチェンマイの古い村で、旧村名は「サンドークカムタイ」と呼ばれていた。住民のほとんどはラーンナー王朝の昔の都市であるムアン・プやムアン・ サートから強制移住させられたタイ族である。現在はミャンマー・シャン州の領土となっている。ムアングン村に移り住んできた初期の居住者たちは農業に携わり、 乾季になると農民たちは村の近くの土を堀って、その土から飲み水を入れるための容器である「ナームモー」( 飲み水を入れる甕を指す北タイ方言 ) や「ナームトン」( 水 瓶を意味する北タイ方言 ) を作ることを生業とした。このような生活は 200 年以上も前からずっと継承されてきた生活様式であり、この村ではナームトンや陶器を 村の内外で売り、村人たちは通行人の喉を潤すためにナームモーやナームトンを自分の家の前に置いていた。そのため、この村は「陶器職人とナームトンの伝承の村」 と言われている。 農業に適した平野と良質な粘土があったことから、昔のムアングン村の村人たちは陶器、特にナームトンとナームモーを家庭用や儀式用、托鉢のために製造した。また、 余った陶器があれば近隣の村人と交換したり、売買に使ったりした。こういったことからナームトンの製造はこの地域の集落の主要産業となった。ムアングン村のナー ムトムとナームモーは、タイ北部によくみられる硬土を原材料にして、成形は竹柄のついたチークのろくろを用いて行う。硬土はまず乾かし、臼で砕き、篩にかける。 その後、きめ細やかな粘土だけ水と混ぜ合わせ、一晩寝かせて成形する。成形後には、ココナッツオイルまたはディーゼルオイルを加えた赤土を塗り、適度に乾燥 させる。それが終わると石で表面を磨いて孔を塞ぎ、光沢を出す。そして日光に晒し乾燥させた後で、窯に入れる。ムアングン村では、住民たちが共同利用する窯 があちこちにあり、集落の職人たちがそれぞれに作ったナームトンを持ち寄る。窯が一杯になったところで、およそ摂氏 800 ~ 1000°Cで焼く。また、薪はバーン タワーイ村の木彫や建築で出た廃材、ラムヤイの枝を使用している。 しかし社会の変化に従い、村のナームトン職人たちの高齢化が進み、村の外に働きに行く若者が増えていった。同時に都市の人口が増加し、住宅地開発のために古 い窯が破壊されていった。また一方で陶器のデザインも増えていった。ナームトンやナームモーだけではなく、多様化する観光客などの顧客のニーズに応えるよう に工夫を行った。またそれは生産方法を変化させ、木製のろくろに代わり、モーター付きのろくろが使用されるようになった。
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