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 根源
タイ北部地方は仏暦 1835 年(西暦 1292 年)にマンラーイ王によって創設されたラーンナー王朝 の領土であり、仏暦 1839 年(西暦 1296 年)に正式な首都として「ノッブリー・シーナコーンピン・ チェンマイ」(現チェンマイ)を定めた。タイ北部は、山々の間に盆地が点在する地形であり、その 中で人々が分散して居住している。 タイ国内の他の地域と同じように、タイ北部にも様々な民族がおり、ラーンナー族以外にも様々な 他民族が共住している。例えば、ミャンマーから移り住んできたタイ・ヨーン族やタイ・クーン族、 さらにカレン族やモン族などがいる。これらの民族グループはそれぞれにアイデンティティを持っ ており、話し言葉や装い、習慣、伝統手工芸などが異なる。しかし、類似点も多くある。例えば、 似通った言葉、歌謡、舞踊、農民としての生活様式、そしてアミニズムや祖先霊信仰、上座部仏教 などである。また、手工芸や音楽といった芸術表現を通じて考えや感情を表すことを大切にしてい る点も挙げられる。 さらにタイ北部のそれぞれの集落では自然を活用して暮らしており、身の回りの自然素材から日常 生活で使う道具を自分の手で作っている。このような生活が、それぞれのアイデンティティを示す 素朴で美しい手工芸品を生み出す基盤となっている。これらの手工芸品は訪れる人の心を捕らえ、 記念品として好まれて買われていく。この「根源」の章では、上述の手工芸作品を生み出し、さら に若い世代が生み出した萌芽的作品の起源となった文化的根源について述べてゆく。
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