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2017年 8月 21日 寄 稿 文 弘前での伊藤先生との思い出
 株式会社初田製作所    福田真弓
 まずは何をおき
ましても、伊藤先 生が輝かしいご業 績をあげられて退 職されますことを、 心よりお喜び申し 上げます。
伊藤先生とお会いしたのは、弘前大 学に機械工学系の学科が初めて開講さ れた 1999 年のことです。伊藤先生は 弘前大学の知能機械システム工学科が 学生を受け入れるようになった初年度 からいらした先生で、私はその一期生 でした。
それ以前の弘前大学には工学系の学 部学科はありませんでした。立ち上げ 当時はおそらく、本当に何も無い状態 からのスタートでいらしたことと想像 いたしますし、工学系の基礎実験用の 機材なども、学科の初期メンバーの先 生方がそれぞれに集められたと伺った ように思います。弘前大学に元よりあ った理学部との折り合いなどもある中 で、ご苦労も多くおありだったろうと 存じますが、私ばかりでなく同窓生も 学生の側はそんなことも全く気づかず のびのびと過ごさせて頂きました。
先生の研究室を志望する動機となっ たのは、自分の不勉強をさらすずいぶ んと恥ずかしい話になるのですが、先 生の流体ダイナミクスの講義が面白か ったというところが大きいです。毎回、 講義の最初にお話しされたシャワーカ ーテンやペットボトルロケットのお話 を、今でも良く覚えております。研究 室の志望動機が流体の講義だった件に つきましては、幾分ご容赦いただける なら、学科の一期生で先輩方の研究紹 介などもあまり無い中だったという点 をわずかばかり加味していただければ と思いますが、後輩でも似たようなこ とを白状した弘前大伊藤研OBはずい ぶん多くおりましたので、先生のご人 徳と話術のパワーを感じると同時に、 どうも弘前ではちゃんと研究紹介しな
い文化を作ってしまったらしいと、初 期学生として反省しております。
ゼミ生となった時にも先輩方は他学 科から転科されたわずか数名が一級上 にいらっしゃるばかりでした。学生の 立場からすると、先生との距離が近く、 大変に恵まれた環境でした。ホログラ フィー干渉法で撮影するためにエアコ ンを止めて両隣の実験室が無人のタイ ミングを使用して実験したことなど、 懐かしく思い出します。当時はまだデ ジカメの解像度も不十分で、ガラス乾 板と高感度のフィルムカメラで連射し て、上手く撮れたり撮れなかったりと いう時代でした。今から思いますと、 実験の失敗も少々多く、フィルムも無 駄にしてしまったものだという気もい たしますが、実はこの辺りで少しだけ 覚えたカメラやレンズ周りの知識は、 その後、今の職に就いてからも時折役 に立っております。
修士の後半からテーマとして与えて いただいた複数火災間での熱供給の問 題については、対流熱のフィードバッ ク量のモデル化に著しく手こずったと ころに始まり、対流熱の方がそれとな く形になったかと思っても、今度は既 存の輻射熱モデルが割と大雑把で対流 熱モデルの妥当性を検証できず、結局 輻射熱モデルの刷新を主軸に据えて博 士論文にすると、二転三転することに なりました。本来でしたら私が考え抜 かないと行けないようなところまで、 先生にはずいぶんお知恵をお借りして しまいました。今でしたら、もう少し 色々考えて動けるのにと思う部分も多 く、不出来な学生で恐縮の極みです。 おそらく伊藤先生でなければ、博士号 を取れるところまでご指導いただけな かったろうと思います。
就職に関しましても伊藤先生と共同 研究をしていた初田製作所にご紹介い ただいたおかげで、大学に籍を置いた ままD2の春から会社に所属すること が許されました。就職に関する憂いな く2年間研究できたことも、本当に幸 いでした。本当に何から何までお世話
になったような形になりましたが、な かなかご恩返しできなかったことは申 し訳なく存じます。
大学を出て完全に仕事の方に移って からは、学生時代の専門とは違います が、少し珍しいものを扱うことができ まして、何かと面白い経験をしており ます。消防関係の会社の技術職でもあ りますので、もう少し勝手が効くよう になりましたら、その際には伊藤先生 にご指導いただいた専門を生かして何 かできればなと、アイデアだけはこっ そり温めているような次第です。
伊藤先生におかれましては、私が入 学した頃よりもさらに一段と言わず三 段ほども窮屈になった大学を離れられ て、自由なお時間が増えられたかと存 じます。
先生には長くお元気でいただいて、 テニスや時計修理のほか、色々なご趣 味を満喫してお過ごしになれますよう、 おいのりしております。
 



















































































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