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解され,夜には唯一の炭素資源となる.ここで,ショ糖 の呼吸と輸送の比率やデンプンのショ糖への分解速度は 概日リズムを司る時計遺伝子により制御されるとしてい る.さらに,デンプン代謝の線形性がショ糖を一定量に 保つ(ショ糖ホメオスタシスと呼んで、いる)ことにより 達成されることを示した.また,ショ糖応答ができない 変異体を用いた実験により理論の有効性を主張している [10,1,12].
本報告では,佐竹らのショ糖ホメオスタシスモデルを Blasiusの CAMモデルに組み込むことを試みる. Blasius の CAMモデ、ルは代謝モデルにより,概日リズムが発生 することを示しており,遺伝子ネットワークは含まれて いない.このため,佐竹らのショ糖ホメオスタシスモデ ルでは,概日時計の位相情報に依存してデンプン分解速 度が変化することで炭素資源動態が変わり,その影響が ショ糖刺激という形で概日時計にフィード、パックされる
しくみとなっている.‘このようなフィードパック構造を CAM植物の代謝モデルに組み込むことで,時計遺伝子 を用いないショ糖ホメオスタシスモデ、ルを構築する.
2 CAM植物の光合成モデル 2.1 Blasiusらの単細胞モデル
Blasiusらの提案する CAM単細胞モデ、ル [1]を状態 方程式で記述すると次式となる. Blasiusのモデルでは, 転写制御機構,酵素活性化や葉緑体でのカルビン回路が 考慮されていないことから,最近,新たな CAM光合成 モデルが 2つ提案されている.ただし,状態変数は,内 部二酸化炭素濃度叫細胞質内のリンゴ酸濃度 ι 液胞 内のリンゴ酸濃度 y,液胞膜内のリン脂質分子の並びを 表す変数 zからなっている.
図 1:3つの反応体プールを状態変数とする CAMモデ ルの流束図
第 1図は日周サイクルの聞の炭素の流れを生成する CAMの主な反応体プールを表している.プールの濃度 は,内部二酸化炭素濃度叫細胞質内のリンゴ酸濃度品 液胞内のリンゴ酸濃度 y,液胞膜内のリン脂質分子配列
を表す変数 Z からなっている. CAMモデ、ルは次式のよ うに代謝を表す 3つのフロ - Ul,U2,U3と動特性を表す
4つの非線形微分方程式で、モデ、ル化される.
ω (t)=-U2(t)+U3(t) 。εx(t)=-Ul(t)十 U2(t)
(t)=Ul(t)
7止(t)=g(z,T)-y(t) (t)
Ul(t)=cx(t)-z(t)
ω(t) U2(t)=一 一 - x(t)
x(t) U3(t)=Jco2(t)-Cco2(t)+Rco2(t)
(Cext(t) ω(t)) J co2 (t) = C J (αω (t) )
Cco2(t)=L(t)ω(t)
i-'K W l
L(t)+LKω(t)+ω1 ただし,各物理量と定数はつぎのように与えられている.
切 ,x,y,z:状態変数 T:外気温度(無次元化),制御ノ fラメータ L:光の強さ(無次元化),制御ノ Tラメータ C回外部二酸化炭素濃度,制御ノTラメータ ε:時定数(細胞質と液胞の体積比から求まる) ァ:時定数(熱平衡ヘ至る弛緩) C,CJ,CR,LK,ω1,α:定数(無次元化) g(z,T):液胞膜の非線形特性を表す関数 的:液胞内外へのリンゴ酸の流入出の差
U2:ホスホエノールピルビル酸カルボキシラーゼ、 (PEPc)により二酸化炭素が凝固されて生成される リンゴ酸生成量と炭酸基除去による減少量との差.
U3:外部からの二酸化炭素の取りこみ量 Cext(t)か ら光合成による二酸化炭素の消費量を引いたもの.
Jco2:外部からの CO2取り込み量 Cco2:L(t)に比例する光合成による CO2消費量 Rco2:呼吸による CO2生成量
また,液胞の膜配列を表す非線形関数 g(z,T)を第 2図 に示す.
Blasiusら [1]は,以下の無次元化したパラメータを用 いて,各々 5つの温度で,連続光のもとでのシミュレー ションを行っている .Cext= 1,L(t)= 1,T= 0.238, 0.2242,0.2 246,0.2250,0.2 254,C = 5.5,CJ = 1,C R = 1,
ε=0.01,T=0.35,α=1.5,Wl=0.1,LK =0.5,R= 0.1.これらのパラメータを用いた MATLABjSimulink
R
(t) 二 CR~
co2