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     517 人工肺と組織細胞を用いた呼吸器掴代謝系 非動物実験による火災ガス毒性評価方法の確立
EstablishmentofNon-AnimalTestingforAsesmentoftheFireGasToxicityby RespiratoryandMetabolicSystemsUsingArtificialLungandTisueCels.
0学千田亮一大村友彦(大分高専) 正小西忠司(大分高専) RyoichiCHIDA,TomohikoOMURA,TadashiKONISHI
OitaNationalCollegeofTechnology KeyWords:Firegas,A549,Hydrogencyanide,Toxicevaluation,Non-animalexperiment
1. 緒 言 近年,住宅の高気密高断熱化が普及し,一度,火災が起きる
と低酸素濃度環境が形成される .その結果,居住者は, OA機 器に使用されるアクリノレ樹脂, ABS樹脂,寝具や座布団に使用 されるポリワレタンや新建材から発生した一酸化炭素 (CO), シ ア ン 化 水 素 ( H C N ) , 塩 化 水 素 ( H C I) , ホ ル ム ア ル デ 、 ヒ ド (HCHO),アンモニア (NH3) など多種多様の有毒ガスに暴露 される (1) 火災ガスの毒性評価は 従来までラットやマウスな どの動物実験をモデル火災建物あるいは燃焼装置を用いて行 われてきた.しかし 昨今欧州を中心に動物実験を廃止もし くは最小限に抑制する世界的な動きがある.また,近年,大学 でも,熱傷や有毒ガスを動物に負荷する実験は,動物虐待とし て規制レベルが強化されている.そこで,本研究では動物の代 わりに肺腺癌細胞 A549に火災ガスを暴露し,毒性評価試験を 行い,動物実験に代わる評価方法を検討することを目的とする 昨年の実験では, ABS樹脂の燃焼により発生した火災ガスを
A549に 4時間暴露した結果,初期細胞数 3.0x10コcels/m1から, 4時間後には 5.1x104cels/m1に減少し,生存率は 40%になった しかし,実際の火災では,木材やプラスチックなど多種多様の
材料が燃焼するため,当然,火災ガスの成分も変わってくる そこで,本研究では, ABS樹脂に加えて,ナイロン 6,ウレタ ンを追加して火災ガス毒性を検討した.さらに,細胞付着面が 異なるポリスチレン製培養皿と Transwelの比較も行った
2. 実験装置および方法 2.1A549細 胞
細胞は,癌化したヒト肺胞基底上皮細胞 A549 (宮崎大学仙 波和代博士より供与)を用いた. A549は 1972年に 58歳のコ ーカサス人種から摘出し,体外培養され肺腫蕩から確立された 付着性細胞である.-80oCに冷凍保存された A549を自然解凍し, 培地に懸濁した.培地は, Eag1e (ニツスイ 680541)に牛胎児 血清 10%(CCB171012)メイロン 1.5%(日本薬局方静注 7%), レ グ ル タ ミ ン 5 % ( 和 光 純 薬 工 業 2707) , ペ ニ シ リ ン 0.5 % (明 治製菓,注射用ペニシリン Gカリウム 10万単位)を添加して 作製した A549を培養皿と Transwelに細胞濃度以10コcels/m1 に播種し, 370C,5%C02に 2日間静置した.
2.2 実験装置 実験装置は火災ガス収集装置と火災ガス暴露装置から構成
さ れ る . Fig.1 に 火 災 ガ ス 収 集 装 置 の 概 略 図 を 示 す . 金 網 上 の ア ルミ皿に置かれた供試サンプルは,バーナーで、下部から加熱さ れ燃焼する.発生ガスは,真空ポンプ (U,工VACDAM-010) に 吸 引 さ れ , o 2 0 m m の ア ル ミ 円 筒 容 器 と ガ ラ ス ロ ー ト に よ り フ ィルターに導かれる.グラスウールにより固形物は除去されて アルミニウムガスパック (GLScienceInc.100LAAP8) に蓄積
される.火災ガスは,過去の実験(2)より,二酸化炭素検知管(ガ ステック, 2L,吸引時間 2分),アンモニア(同社 3M,45秒),
一酸化炭素(同社 1M,1.5分),シアン化水素(同社 12M,1 分),ホルムアルデ、ヒド(同社 91M,1.5分)の 5種類のガスを 2回分析した.
Fig.2に火災ガス暴露装置の概略図を示す.火災ガス暴露装置 は,火災ガス, 5%C02,空気の 3つの環境における細胞培養状 態の比較が可能である.昨年の実験結果より, 5%C02と空気で は A549の生存率の誤差が士3%以下と差異はないことから,本 実験は火災ガスと 5%C02の 2つを比較した.火災ガスは,ガ スパックからアスピレータ (HarvardAparatus,Inc.687Mouse Venti1ator) に吸引され,角形ジャーの細胞へ暴露した後,外部 に排出される.CO2は,5%C02インキュベータ (ThermoScientific BB 15) 内で細胞へ暴露した後,外部に排出される.インキュ ベータは 370Cfこ設定し,培地の蒸発を防ぐため A549の周囲に 蒸留水瓶を設置した.実験装置は火災ガスを排気するためドラ フトチャンパー内に設置する. Transwelは, 0.4μmポリエステ ルフィルターで細胞を支持する構造で,拡散チャンバー内に設 置して使用する培養皿では培地に溶解したガスが細胞上面か
ら吸収されるが, Transwelは溶解ガスが細胞全面から吸収され る本実験では,細胞の支持方法および火災ガス暴露状態の影響 を確認するため拡散チャンパーは使用せず, Transwelを培養皿 に入れて使用した
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/Material
/ê-1-\~...h Fig.1Firegassuctionapara加 S
370C5%CO, Incubator
Exhaust
Fig.2 Fire gas exposure ap para印 S













































































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