Page 18 - Tsubomi
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 芽ばえ
タイの地方の手工芸品は美しいことで知られてはいるが、簡素で外国人観光客にしか人気がない。 その一方で、地元の職人たちは熟練した製作技術を持ち、身近にある素材を応用して、手工芸品を 生み出してきた。しかし、結果として残ったのは観光客の需要を満たすためだけの従来通りの製品 であり、これまでに現代的でより広く世界市場に向けて輸出が出来るような新しいデザインを生み 出すことはできなかった。また、より高い教育や賃金を求めて人々が都市部へ移動する時代になり、 今地域に残っている熟練した職人は、高齢者ばかりになっており、さらに後継者不足や若い人達が 持つ創造力を失っており、先が見えない状態にある。 このような現状に鑑みて、ラーンナー文化工芸協会(LCCA)は、多摩美術大学(日本)とアート センターカレッジオブデザイン(米国カリフォルニア州)の 2 大学の協力の下で、パシフィックリ ムプロジェクトへの参加を決心した。このプロジェクトでは、上記の 2 大学の学生とタイ全国の大 学から参加学生がチェンマイ、ランプーン、ランパーン及びパヤオの 4 県で 2 週間のフィールドス タディを実施し、身近にある地域文化について調査した。調査を通じて、地域村落の成り立ちの歴 史を知り、さらに地域色豊かな手工芸品を生み出す住民の生活実態にも触れることになった。その うえで「フューチャークラフト(未来の工芸)」というコンセプトの下で、フィールドスタディで得 た自らの経験やインスピレーションを商品デザインに自由に応用した。ただ目標は定めており、地 域に住む職人たちに安定した収入と生活を保障し、さらにタイの地域文化から得た経験やインスピ レーションを用いた成果を生み出すことにあった。
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