Page 89 - Tsubomi
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  「フューチャークラフトとは、私たちにとって商品自体の耐久性だけでなく、商品の 製造者にとっての長期的な将来も視野に入れた責任あるものづくりを意味します。」
オープンハンドプロジェクト(Open Hand Project)の製品は、タイの人々の温かさと優しさ、特にパヤオ県に到着したときに行 われた招魂儀礼の際にタイの学生たちから贈られた蝋燭の光に着想を得て制作を進めた。 またアンナと日菜子はバナナ繊維製品について調査するためにパヤオ県バーン・パーファーンを訪れた際に、バナナに素材としての様 々な利用の可能性があることを見い出した。しかし同時にバナナ繊維で作られた製品には製品の生産と輸送に多くの課題があり、手 作業による製品生産では時間がかかり、市場が不安定な上、仲介人への高い依存、魅力のない製品による注文量の減少などが起こり得 る。そこで、アンナと日菜子は、コミュニティにとってより多くの持続的な収入となり、さらに地域資源を利用して職人たちが伝統 技術を守って生産できるようにするためにこれらの可能性と課題を勘案し、製品を提案した。地域資源は三つのグループからなり、 一つ目はバナナや米といった農業製品、二つ目は織物や籠編みといった手工芸品、三つめは集落内でのひとの絆や助け合いの精神とい った無形の資源である。それらの資源を生かしながら、美しく、初期投資が少なく、価値ある素材を利用した2つの製品を作り上げた。 1. 浮き(Float) パヤオ県に到着した最初の夜、タイの学生たちが開いてくれた歓迎会で贈られた蝋燭の火の魅力に着想を得たテーブルランタン。 この製品デザインの第一の目標は、この集落にできるだけ多くの生産工程を置くようにすることであった。このランタンには原価 が高くない三つの地域資源を使用している。地元の人々に馴染み深いバナナ繊維、水と塩を少々混ぜて糊を作るための米、どこに でもあるペットボトルである。これらの材料はコストをほとんどかからず、リサイクルして使うことができる。さらにランタンと するために3ボルトの乾電池を使用してLED電球を点灯させるために簡単な電気回路を作った。第2の目標は身近な道具を使用する ことにある。包丁、はさみ、アイロンのような一般的な道具を用いてシンプルな素材を美しい素材に変える製造方法を開発した。 2. 炎(Flame) この吊下げランタンは、自然素材の温かさと美しさ、さらに光と影の演出に着目しデザインされた。「浮き」(Float)と同じ三つの 素材で構成されているが、さらに大きな製品も複雑な機材を使わずに製造するために、厚紙をモールド整形することも取り入れてい る。ランタンは室内や客室を温かく、エレガントに照らす。 これら2つの製品のターゲットはタイの現代デザイン市場であり、世界市場を狙う前に、まずは職人たちが自国の文化や言葉を使っ てビジネススキルを発展させていくことを目指している。
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