Page 9 - 이성영 작가 작품집
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イ・ソンヨン - 果てしない実験を通じて今の時代の絵画を作り出す





           作家の作品は内容と形式で構成されている。ハンガリー出身の美術史家アーノルド·ハウザーはこれを「水と器」の関
           係に例えて明確に説明している。内容に適した形式の発見を芸術と見なす。内容と形式が一致すれば美しいが、そう
           でなければ芸術として生き残ることはできない。ワインをボウルなどで飲むとどうだろうか。味そのものは変わらな
           いだろうけど本来の味を楽しむことは難しいと思う。ワインはやっぱりグラスで飲むべきだ。同じく湯気の立つ白い
           ご飯が白い茶碗にこんもり盛られて黒いお盆の上に置かれていればどうだろうか。おそらく食欲がそそられるに違い
           ない。時には敬虔に感じられるかもしれない。ところで、白いご飯が道端や小川に落ちているとすればたぶん汚く感
           じるだろう。


           どこに置かれるかによって美しく見えることも、そうでないこともある。これが芸術における内容と形式のハーモニ
           ーになる。本来の姿で適時適所に置かれることが内容と形式の真の調和であり、こうした作品が見る人の心を動かす
           のである。

           したがって、多くの作家は自分がしたい話(内容)に合った方法(形式)を探し出すために絶えず努力する。ところが、突
           き詰めて見ると内容がまったく新しかったり、大きく変わったりはしない。小さくは自分の話から周辺や社会、さら
           には自然や歴史などに至る。これを作家がどのように解釈するかによって作品の内容が少しずつ違うだけである。

           問題は話を伝える方式、すなわち形式において作家や作品の弁別性があらわれる。作品の個性もここであらわれてい
           る。そのため、作家たちは新しい方式の表現法の探しに没頭する。しかし、内容に合う形式探しは決して容易ではな
           い。作家の力量もここで決まる。

           イ・ソンヨン(李成泳)は自分ならではの言葉を探し出すために地道に努力してきた力量のある作家である。多くの経
           験と実験で様々な材料と方法を開拓した。開放的な考えで作業を行う彼の実験は現在も進行中だ。自分がしたい話に
           合った伝達方法を見つけるための求道者のような旅程だ。


           彼は伝統絵画を専攻し、優れた技量を備えた作家だ。彼の実力をもってすれば、伝統絵画分野において十分認められ
           安住できるにもかかわらず、新しい実験に挑戦する理由は何だろうか。

           「伝統絵画は宋明代にすでに完成したということが中国旅行を通じてわかりました。その方法では新しい絵画を生み
           出すことはできません。ですから、この時代に合った絵画の言葉を作り出すための努力が私の作業だと思っていま
           す。」

           このような考えを反映した彼の作業は、東洋的内容と西洋的材料、技法の調和で、新しい感覚のこの時代の絵画と見
           える。彼は多様な材料(錠剤、カプセル、金属、小盤など)を活用して自分ならではの語法である質感を開発し、これ
           を土台に伝統的な構成方法と変形した伝統器物を組み合わせてイ·ソンヨン式の現代絵画を作り上げている。



                                                    ジョン・ジュンヨプ(全俊燁)画家・ビズ韓国 アートエディター












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