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    電流を負荷しない場合,冷却開始前 (250C) のときの pHiは 7.1~7. 35と一般的に言われている pHiに近い値 を示した後,冷却 (lOC/min) とともに徐々に減少し 50C近くになると温度では 7より低い値となり酸性側にシ フトする.-50Cではより酸性化が進み 6.7より低い値を示す.冷却条件ほか実験条件が異なるため単純な比較は できないが.多少の違いはあるものの,これらの値は概ね Murai&Yoshida(6)の結果と一致している.さらに-50C で 30分間維持すると,さらに酸性化が進み 6.6近くまで低下する.この状態から, lOC/minで加熱し実験開始前 の 250Cに戻す.しかし,その際の pHiは 7.0より小さい値となり,実験開始前の値よりやや低い値を示し,ヒス テリシスの傾向を示す結果となった.
一方,電流負荷した場合 (1μA),電流負荷する前の pHiは負荷しない場合と同様の値を示すが(図中塗りつぶ しのマーク),電流を負荷すると, pHiは 7.7以上と大きくアルカリ側にシフトする,冷却開始後は,負荷しない 場合と同様に徐々に pHiの値は減少して行くが, -50Cに至っても pHi=7.0以上の値を維持している.この状態を
8
7.8
7.6 イ)-OpA
30分保持すると, pHiは低下し酸性側 にシフトするが,負荷しない場合に比 べ高い値を示している.次にこの状態 から実験前の 250Cに戻すと,実験前の
7.4
国94 7.2 7 6.8 6.6
"6."lpA 値にほぼ近い,アルカリの値を示す.
・0 ・10pA
Fig.4TransitionofpHiundercolingstreswithorwithout theaditionofelecuicCUlTent(JerusalemArtichoke)
しかし 3 実験開始前に電流を負荷した 場合に比べると, pHiの値は低くなっ ており,負荷しない場合と同様ヒステ
リシスの傾向がみられる. 電流負荷
10μAの場合は, 1μAと同様な傾向で 推移するが, pHiの値は lμA場合より 全サイクルにおいてより高くなってい
る.この結果は,負荷電流を増大させ ることにより, pHiをより高し叶直にシ フトさせる効果があることを示唆して し1る.
6.4-10 -5 。5 10 15 20 25 30 Temperature[OC]
4. 結 言 本研究により,電流負荷により過冷却維持温度をより低くできることおよび低温ストレス下における細胞の生
存率を高くできる可能性を見出した.また,低温ストレス下における細胞内 pHを測定した結果,冷却の進行とと もに pHiはアルカリから酸性側にシフトするが,電流を負荷すると pHiはより高い値,アルカリ側にシフトし,
酸性化を遅らせる効果をもたらすことが明らかになったなお,種々の細胞において,細胞の活性化に伴い細胞 内 pHの変化(高い値を示す)が報告(7)されていることから,本研究で得られた知見は,電流負荷が細胞を活性化 させ低温ストレスへの耐性を向上させた結果とも考えられる.
参考文献
(1) 岡崎守男,渡辺尚彦,赤尾剛,食品工学基礎講座加熱と冷却,光琳(平成 3年), 1-180.
(2) 江口暁美,鳴海明,飯田泰広,第 21回バイオエンジニアリング講演会講論集, No,08-53(209),381-382. (3) 江口暁美,鳴海明,飯田泰広,小西忠司,第 2回バイオエンジニアリング講演会講論集, No,09-5(2010),
103.
(4) 江口暁美,鳴海明,飯田泰広,熱工学コンファレンス講演論文集, No.10-25(2010),163-164. (5)日本生化学会編,新生化学実験講座 8細胞内情報と細胞応答,東京化学同人(190年), 142-148. (6) M.MuraiandS.Yoshida,PlantCellPhysiology,39-1(198),97-105.
(7)米 山 彰 子 、 中 原 一 彦 , Medical lmmunology, 18(1989), 813-817.










































































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