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高校を卒業後に夜間大学の工学部に入り、バイトとバイク乗りに明け暮れた祐史さん。
                                             生来の機械好きで、就職先もメカニックとしての腕が磨けると電機会社の開発部を選びま
                                             した。レーザーディスクやFAXの機械設計に携わり、充実した日々を送ります。「家を出て
                                             3年したら、話をしよう」という先代との約束のため家に帰ると、父親が病に侵されていると
                                             知らされました。余命わずか2年。27歳だった祐史さんは、家業を継ぐことを決めます。

                                             当時の柴田織物は織機を持たず、出機と呼ばれる協力工場に糸や紋紙を届けて織りあ
                                             がった製品の仕上げを行う生産管理の役割を担っていました。「50台を超える出機があ
                                             り、家族経営でとても忙しかった」。しかし、先代の他界と織物産業の陰りが機場を襲い
                                             ます。その頃は一つの図案作成に何百万円もの費用をかけて何百反と生産するスタイ
                                             ルでしたが、市場全体の縮小や卸先に虐げられる出来事もあり「このままではダメだ。
                                             他にはない、自分が面白いと思う着物を作ってみよう」と思い至ります。そうして完成した
                                             のがパイソン柄の着物です。これまで下絵を手がける絵師のもとに通った経験から、いつ
                                             しか意匠に必要な構造を見抜いていました。紋紙屋とのやり取りからは、織機の拵えに
                                             あった柄の設計をインプットしていたのです。情報を分解整理して、カスタマイズして組
                                             み立ててしまう。絵は描けないと言いながら、デザインの要素を巧みに操って着物に落と
                                             し込む柴田スタイルが構築されていきました。自社に織機も設置し、小ロットや特注対応
                                             にも強化。その腕に憧れた青年も弟子入りしました。




              ファンタジスタなプ


                     レイヤー

















                                             鋭い視座は、丹後産地そのものの分析にも向けられます。「他の産地を訪れて、丹後産
                                             地が持つ影響力の大きさを知りました。国内最大の絹の産地であり、技術的にも優れて
                                             いる。なぜ生き残っているのか理由がわかれば自社製品にも自信が持てる。和装文化に
                                             支えられた歴史を知れば、その伝統を伝えることが価値に繋がると分かる」。ハリウッド
                                             映画や芸能界からのオーダーもありますが、着物を軸とする姿勢を貫いています。





                                                                               「これは色数が多くて四重組織になって
                                                                                る。千八(センパチ)の拵えはフラットで繊
                                                                                細な織り上がりになるからこのデザインに
                                                                                向いていて…」。ひとつ質問をすれば、知
                                                                                識も技術も惜しげもなく教えてくれる祐史
                                                                                さん。尽きることのない織物への探究心
                                                                                が、次世代をも牽引していきます。







                                                                                            №2 | 2021       37
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