Page 100 - 00_片山鉄建様_表紙
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Special T alks
取引先 イ の ン っ た か だ が ら 川鉄 メ 「 1 0 0
―― 西山社長はご存じなかったんですね。 でしょうね。今では笑い話のような話ですが
片山 ● しばらくして乗添さんが立売堀に (笑) 。 周年記念特集
あった片山商店の本店にやってきて、「片山
さん、これまでのことはなかったことにして欲 意見をきちんと相手に伝え、
しい」と平身低頭ですよ。それから川鉄の鋼 聞く耳を持てるか Ⅰ
板をドカンと入れてくれるようになった。
福島 ● なかなか興味深いお話ですね。出 ―― 2019(令和元)年8月に、片山鉄建は創業
荷停止に踏み切るというのはおかしな話と思 から100年を迎えます。1世紀の社齢を重
いますが、会社の方針や経営政策にもいろい ねることができた要因は何だと思われます
ろとあるんです。それで商社側とぶつかること か? SPECIAL TALKS
も少なくない。ただ、そんな時にも喧嘩別れ 片山 ● 得意先、社員の両方に恵まれたこと
するのではなく、とことん話し合う土壌を作っ でしょうね。それにメインの取引先が川鉄で
ておくことが大事だなあと思いますね。メー あったこと、これを忘れてはいけない。
カーと商社というのは密接な関係にあります 福島 ● ご自分ではなかなか言えないと思う
が、考え方や進む方向が違うこともあるし、 1 0 0 けど、僕は経営者だと思いますね。創業者か
お互い相容れないこともありますからね。 ら現在に至るまで、経営者に恵まれていたか
―― ところで「ハンスト」というのは、どこからき ら100年という歴史を築くことができたんじゃ
た言葉ですか? っ に 年企業 な た 」 ないかな。最初から現在の姿で、この100年 な 「経営者 に る す よ ん で た い か 長寿企業 ら 恵 に ま て れ 」
片山 ● 片山では「ハンスト」なんて思ったこ 間成長し続けているような印象がある。きわ るものではない。 ―― さて、100年は一つの区切りで通過点で
とがないから、川鉄が作った言葉だと思いま めて珍しいし、本当に数少ないと思います。 ―― 福島さんは、片山鉄建という会社に対して す。今後の片山鉄建のあるべき企業像を
す。製品の出荷を止めても我慢して頑張っ それを可能にしたのは経営者の個性の強さ どんな印象をお持ちですか? お教えください。
たから「ハンスト」という言葉を思いついたん で、全社員を引っ張ってこられたわけですか 福島 ● 一つはトップの人がきちんとしてい 片山 ● 得意先、取引先のことを思い遣る心
らね。それは凄いことですよ。 た、ということですね。それが社内のいたると を忘れない会社になることが大切だと思いま
片山 ● ラッキーな面もあったように思いま ころに徹底されていました。トップの考えたと す。私はよく「得意先の発展を祈る」という言
葉を使うのですが、得意先の発展を祈ったら
おりに社内が動くんです。もちろん、それが良
片山 すね。 くもあれば悪い点もありますが、トップの考 「安く売らなきゃいけない」ということになり
福島 ● それはそうかもしれないけれど、ラッ
キーをものにできるところも大きい。昔は違う え方がしっかりと流れて、社内に根づいてい ますよね。
会社の製品を扱っていたのに、最終的にはす るのはいいことだと思う。信頼も得られます 会社としては儲けなければならないけれ
べて川鉄のものになった。それと片山兄弟の しね。 ど、価格を離れて得意先、取引先それぞれの
仲がいいというのも見落とせない。お兄さん 片山 ● 「鋼板の製品を扱いながら、川鉄の 繁栄を祈ることができる会社になって欲しい
の栄三さんが『E.Kひろば』という本を何冊も ものを売る」という姿勢が浸透していくんで と思う。そのためには、それぞれとの確固た
作っておられますね。 すね。 る信頼関係の構築が欠かせません。信頼感
片山 ● A4で3ページくらいのレポートです ―― これまでを振り返って、メーカーと商社の をどんどん深めていけるような事業活動を展
が、ガリ版印刷で毎月発行していました。仕 理想的な在り方はどのような形が良いか、 開できる会社、そんな企業を社員一同が目指
事に関わる話はほとんどなくて、時代や社会、 教えてください。 して欲しいなと思います。
世相に対する自分の考え、感じたことをまとめ 福島 ● メーカーと商社だけのことではない ―― ありがとうございました。
ていました。 ですが、取引先との関係が大事ですね。自分
福島 ● 今で言えば経営者のTwitterのよう が考えることや信じることをどこまで伝えるこ
な感じで、思ったことを綴って得意先や社員 とができるか。それに対してどう応えてもらう
に読んでもらっていたんですね。 か、ということが問われる世界だと思います。
片山 ● 30年以上続き、3冊の本にもなった。 個々の商売はいろんなことが起こってくると思 記念対談
レポートは社内用ではなく社外向け、得意先 うんですが、おかしいことや、今はそうすべき
にだけ配っていました。社内でも読んでいま ではないこと、いろいろな考え方がある。それ 福島
したがね。今でもあれを読んでいるとハッと を相手に言えるかどうか、聞く耳があるかど
思うことがある。兄は偉かったね。真似でき うかでずいぶん違うと思います。
196 ◆ ◆ ◆ THE 100 YEAR HISTORY OF E.KATAYAMA & CO., LTD. ˗ ˗ ˗ 197