Page 40 - 00_片山鉄建様_表紙
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1950 1962

     沿革編                                                                                                                                                                                                                                   沿革編
                                             災害と需要―伊勢湾台風や第二室戸台風での被災                                                                    急行したが、屋根瓦や鉄板が空を舞い、歩くのも危険な状況であっ
                                                                                                                                       た。ようやく新町倉庫に到着し、屋根に上って補強を始めた。少し

                                               当社は1956 (昭和31) 年12月に資本金を900万円に増資した。                                                     でも気を抜けば人間が飛ばされるような風雨のなかで「死に物狂い」
                                             同年には神武景気により、国内の設備投資が5割もの増加を見せた                                                            の作業であった。

                                             と言われている。 9月に富山県魚津市で大火災があり、フェーン現                                                             事務所に戻ってしばらくすると「水が出たぞ」と知らせる声が聞こ
                                             象が原因と見られる出火によって死者5名、負傷者170名の被害                                                            えた。見ると下水から黒い水が逆流し始めており、瞬く間に事務所
                                             が出た。その後、鍋底景気と呼ばれる不況を経て1959年には岩戸                                                           の1階部分が水没し、倉庫でも多くの商品が水に晒された。そのま
           野球部員と子どもたち
                                             景気が到来した。当社の資本金は同年12月に2,000万円となった。                                                         ま放置すると錆が生じるので、夜通し、社員総出で商品の泥を流し                                                                      CHRONICLE
                                               この時期には台風が幾度も大阪を襲った。 1959年9月、潮岬に伊                                                        た。その後、専門業者に「湯通し」を依頼して蒸気で一気に乾かさな
                                             勢湾台風が上陸し、 1961年9月には室戸岬に第二室戸台風が上陸し                                                         ければならないが、立売堀の同業者は多かれ少なかれ同様の被害を
     CHRONICLE
                                             た。天災の後には復旧用資材を求めるトラックが当社の前に列をな                                                            受けているので、予約を取るのが大変であったという。                                                                           Ⅰ
                                                                                                                                                                                                                                            片山栄 の 時代 と 一 そ
                                             したが、当社自身も被災していることも少なくなかった。ある社員                                                              第二室戸台風の被害は、死者194名、行方不明者8名、負傷者
                                             は第二室戸台風の様子をこう語る。                                                                          4,972名、住 家 全壊1万5,238棟、半 壊4万6,663棟、床 上 浸水
                                                                                                                                       12万3,103棟、床下浸水26万1,017棟とされる。
                                              「16日の朝、ガタガタと云う窓ガラスの音で目が覚めた。外は真
           社員旅行にて
                                             黒い雲が、ものすごい速さで次々ととび過ぎて行く。もちろん阪神                                                                                                                                                                Ⅱ
                                                                                                                                                                                                                                            大阪 本全国 へ 日 か ら
                                             地区の交通は全面ストップ。社長もこの日は通りがかりの車に便乗
                                             させてもらい会社に来られた由、だから当日の出勤者は社長以下独

                                             身男性のみ。」 (『いずみ』カッパ会特集号 1966年7月)                                                                                                                                                   E.K
                                                                                                                                         COLUMN-     12       社内報『いずみ』の発刊
                                               仕事は開店休業状態となった。テレビを見ているうちに、新町倉                                                                                                                                                               Ⅲ
                                                                                                                                                                                                                                            片山鉄建 精神 の
                                             庫の屋根が吹き飛んだという連絡が入り、むしろやシートを担いで                                                                    1965(昭和40)年11月には社内報『いず
                                                                                                                                              み』が発刊された。この社内報は東京支店に勤
                                                                                                                                              務した社員が結核の療養生活を送っていた際
                                                                                                                                              に、病床に伏しながらも会社や社員のために
                                                                                                                                              何かできることはないかと考えて企画したも                                                                         Ⅳ
                                                                                                                                              のであった。創刊号は合計8ページで、社員か                                                                         近年 の 片山鉄建
                                                                                                                                              らの寄稿や社員の紹介、経済教室といった話
                                                                                                                                              題が誌面を彩った。







                                                                                                                                                                                                                                           第
                                                                                                                                                                                                                                           1
                                                                                                                                                                                                                                           章
                                                                                                                                                                                                                                           「「「

                                                                                                                                                                                                                                           三 社長

                                                                                                                                                                                         『いずみ』創刊号
                                                                                                                                                                                                                                           「
                                                                                                                                                                                                                                           就任
                              1961年第二室戸台風で浸水した社屋前で、女子社員たちの中に片山栄三社長(左から 2 人目)




        076  ◆  ◆  ◆                                                                                                                                                                         THE 100 YEAR HISTORY OF E.KATAYAMA & CO., LTD.   ˗  ˗  ˗  077
   35   36   37   38   39   40   41   42   43   44   45