Page 56 - 00_片山鉄建様_表紙

E・K 大きいビジネスになるのでほかの 結果、判明したのは、米国への輸 E
インタビュー 栄三社長との 商社を通して欲しい』と川崎製鉄 出は量が多いため、川崎製鉄の . K
Ⅱ 不思議な縁を感じて から話があって。売るのは自分な 一次製品はすべて大商社を通し ビ ュ ー イ ン タ

のに、それは嫌でしょう。だから別 て行われていた。ただ鉄鋼の商売
1967 （昭和42） 年、栄三社長は のビジネスを探したのです。 には一次製品の鉄だけでなく、針
米国ロサンゼルスにおける現地法 ある日、たまたま散髪をしていた 金、釘、ネジなどの二次、三次製 Ⅱ
人の設立を具体化すべく、北神専 ら、その店の主人が得意先を紹介 品も広く輸出されていることがわ
務の甥である北神泰治氏に現地 してくれるというのです。話を聞い かり、 Fastener（ネジ） の仕事に結
での市場調査を依頼した。氏は てみると、清掃業者のゴミ箱を生 びついたのである。
一橋大学経済学部出身で語学も 産するための資材を納入する仕 しかし、個人にコミッションを
堪能であり、米国保険会社の工 事でした」 支払うことができないということ INTERVIEW
業規格である「UL 規格」取得の で、 1968年11月に当社が5万ド
ためのコンサルタント業務なども ルを出 資して「E.KATAYAMA EK.FASTENERS,INC. にて（左から茂現会長、富美子夫人、隆之現社長、北神氏）
＆ CO.,（AMERICA）INC.」を
設立した。農業用ホースなど、さ 倉庫を整備し、 1万種類近くの商 米国を行き来しながら仕事をしな
EK. まざまな商品を日本から輸入し 品の在庫を行ってストッキング・ ければならず、なかなか適切な人
材が見つからなかったのです。栄
た後、取扱品目をネジ・ビスなど
インポーターとしての地位を確立
FASTENERS, の“fastener ＝ねじ ” 類に絞り、 した。その方法論は、競合先の米 三社長は、自分が亡くなってから、
国企業からヘッドハンティングし
後に残された人間に迷惑をかけた
EK.FASTENERS,INC. へと
INC. の軌跡 社名変更を行った。 た社員に学んだところが大きい。 くないから会社を早く売って欲し
いち早くコンピューターを導入し
いと言うのです。亡くなる数年前
1971年頃、事業を軌道に乗
せるため、当社からの出資は合計
元管理できるようにしたことも、成
14万ドルに拡大。北神氏自身も て、大量の在庫・営業情報を一 のことでした」
EK.FASTENERS,INC. に
北 神 泰 治 氏
自己資金6万ドルを投入した。ま 功の要因となった。 は、ピーク時に67名の社員が所
た、銀行の与信枠を拡大させるた EK.FASTENERS,INC. は、 属していた。業績は好調であった
行っていたため、米国市場調査に 銀行の与信枠を め、生命保険に加入した。 ロサンゼルスを起 点にダラス、 が、栄三社長の意向により2006
は適任であると考えた北神専務 拡大させるため、 「与信枠を10万ドルから100万 ヒューストン、シカゴ、アトランタに （平成18） 年1月に売却されるこ
が声をかけたのである。 生命保険にも加入 ドルに増やそうと東京銀行の現地 も進出し、 1976年には片山鉄建 ととなった。売却先の Porteous
「最初は断るつもりでした。でも 法人に相談したところ、日本の会 貿易部を「株式会社エース」とし Fastener 社は当時業界2位の商
私と栄三さんの誕生日が同じだと 社にいくら担保があっても駄目だ て独立させて、日本国内にもフォ 社で、買収により全米第1位となっ
わかり、不思議な縁を感じて渡米 ロサンゼルスでは、市から委託 というのです。ならば自分の命を ロー体制を築いた。また、円高 た。
Profile :Yasuharu Kitagami することにしたのです」 された清掃業者がゴミ箱そのもの 差し出そうということで、カナダの の進行により日本から輸入するメ
1939 （昭和14）年9月15日生まれ。一橋大 栄三社長の誕生日は1925 （大正 を設置している。北神氏の最初の 生命保険会社と契約して証書を リットが少なくなると、台湾や中国
学経済学部卒。片山商店の創設期を支えた
北神嘉信の甥。米国市場調査の適任者とし 14） 年9月15日、そして北神泰治氏 ビジネスは、その資材を日本から 担保にしました。日本ではやらな からの輸入に注力した。
て声をかけられ、 1967年にロサンゼルスへ。
「EK.FASTENERS,INC.」を全米第4位の の誕生日は1939 （昭和14） 年9月15 輸入する仕事であった。この仕事 いようですが、米国ではこういう 次第に力をつけていった EK.
商社に成長させ、業績好調のまま2006 （平成 日。「EK.FASTENERS,INC.」 は非常に儲かった。市場調査の 方法も可能だったのです」 FASTENERS,INC. は、全米第
18）年に業界2位の商社に売却した。
開設への第一歩を後押ししたのは、 4位の関連商社に成長した。台湾
そのような大正と昭和が違うだけの 全米第4位の の小さなネジ工場から出発して巨
偶然であった。そして、 1967年秋に 関連商社に成長したが 万の富を築き上げ、米フォーチュ
サイヨンロン
1年間の予定でロサンゼルスへ。 ン誌の表紙を飾った蔡永龍氏も
「日本企業はまだほとんど進出 EK.FASTENERS,INC. のビジ
しておらず、三井物産、三菱商事、 米 国の “fastener” 業 界では、 ネスパートナーとして貢献した企
伊藤忠商事、日商、岩井産業、兼 在庫はあまり持たず、受注のつ 業家の一人である。
松江商が同じワンウィルシャー・ ど商品を取り寄せて販売する 「ずっとEK.FASTENERS,
ビルに入っていました。鉄を売る の が 一般的 であったが、 EK. INC. を片山鉄建の子会社にした EK.FASTENERS,INC.の売上推移
EK.FASTENERS,INC.の外観 つもりで行ったけれど、『金額が 1985年、EK.FASTENERS,INC.倉庫で FASTENERS,INC. は 巨 大な いと考えていたのですが、日本と （同社会社案内より）
（1999年 8月） 働く隆之現社長

108 ◆ ◆ ◆ THE 100 YEAR HISTORY OF E.KATAYAMA & CO., LTD. ˗ ˗ ˗ 109