Page 63 - 00_片山鉄建様_表紙
P. 63

1969 1978

     沿革編                                                                                                                                                                                                                                   沿革編
                                               大手総合商社が業界に参入するなかで、組織の大きさではなく機                                                           日本万国博覧会のパビリオン建設
                                             動力を発揮して未来を切り拓いていく。そのようなイメージが「片

                                             山艦隊」という言葉に込められていたのであろう。                                                                     片山鉄建への社名変更が行われた頃、大阪府・千里丘陵の約330
                                               組織改革を契機に、それぞれの営業所の経理担当者は、勤務地が                                                           万㎡に及ぶ敷地では日本万国博覧会に向けた建設工事が急ピッチで

                                             東京であれ福岡であれ、本社経理部長の直属の部下として位置づけ                                                            進められていた。万国博の参加国は70カ国以上、国内出展メーカー
                                             られた。また、上長の意志を貫くため、上長は一人の思想の下に、以                                                           は20社以上にのぼる。会場建設のための工事は総工費五百数十億
                                             下について責任を持つこととした。                                                                          円で、現場には数千人の技術者、労働者が働いていた。
                                                                                                                                         当社もまた、「万国博の成功」を目指して金属建材の材料から施工                                                                    CHRONICLE

                                              (1) 命令・報告のラインの明確化                                                                        までを提供し、清水建設の発注を受けてソ連館、イタリア館、象牙海
                                              (2) 上長の部下の掌握                                                                             岸 (コートジボワール) 館、 EC(欧州共同体) 館、万国博本部館、三井グ
     CHRONICLE
                                              (3) 各部署所属者の責任・権限の明確化                                                                     ループ館、変電所など、複数の建設に関わった。                                                                              Ⅰ
                                                                                                                                                                                                                                            片山栄 そ の と 一 時代
                                                                                                                                         建材には川崎製鉄の H フレーム、安田金属の外装用金属パネル、
                                               ここでのラインとは命令・報告のことで、情報連絡とは「厳に混                                                           矢口式カベラス及びシートラス、角山2型のほか、カクパネルやカ
                                             同するな」と注意が加えられている。情報連絡は「組織を重視し上下                                                           クパネルスーパー(角型のスパンドレル) 、メタルラスなどが使用さ
                                             前後左右それこそ縦横無尽に行われる」ものである。                                                                  れた。これらの建材は、人件費や工期を削減する意味でも欠かせな

                                               上下の身分については以下のように規定されている。                                                                いものとなっていた。                                                                                          Ⅱ
                                                                                                                                                                                                                                            大阪 か 日 へ ら 本全国
                                                                                                                                                                                                                              E.K
                                             •  組織と身分とは完全に切り離して考える。
                                                                                                                                         COLUMN-     22      象牙海岸館の建設
                                               従って身分 (等級・号棒) の低いものが組織上の上位になることも
                                               あり得るし、また組織上上位になっても、必ずしも身分が上がる
                                                                                                                                               1960(昭和35)年は多くのアフリカ諸国が                    円筒形の塔と、それをとりまく伝統的な民家
                                               とは限らない。                                                                                                                                                                                     Ⅲ
                                                                                                                                              独立したため「アフリカの年」とも呼ばれてい                      ふうの展示館で構成されています。三つの円                               片山鉄建 の 精神
                                                                                                                                              るが、アフリカ西海岸の国コートジボワール                       筒形は近代館、民家ふうのは歴史館です」
                                               眼前の状況に臨機応変に対応するには、身分にこだわるべきでは                                                                  が独立を果たしたのも、やはり同年8月のこ                         万国博のパビリオンには、新しい建築・土
                                             ない。いわば、潜水艦や駆逐艦の身軽さが求められていると言えよ                                                                   とであった。面積約32万2,000㎢、当時の人                    木技術の結晶ともいうべき独創的なデザイン

                                             う。                                                                                               口はわずか400万人足らず。輸出生産物の大                      が採用されたが、必ずしも確立した工法があ
                                                                                                                                              半はコーヒー、ココア、バナナで、独立後には                      るとは限らず、板金業者が知恵を絞りながら                              Ⅳ
                                             •  組織とは臨戦体形のことである。したがって戦争の仕方によって                                                                 コーヒー生産量が年約28万 t で世界第3位、                    作業の進め方を練っていくしかなかった。                                近年 の 片山鉄建
                                               体形が変わって然るべし。即ち組織はダイナミックなものである。                                                                 ココアは年約20万 t で同4位にまで成長した。                     この工事は清水建設から需要家課が受注、

                                             •  本社機構は社長・取締役会及び経理部・労務部などのスタッフ                                                                   コートジボワールは元フランスの植民地                        当社工事部が7 ~ 8名の施工部隊を編成し、
                                               により構成される。                                                                                      で、国名もフランス語で「象牙海岸」を意味す                      工期スケジュールに合わせて逐次増員しつつ
                                                                                                                                              る。そこで、万国博では「象牙海岸館」の名称                      完成させた。建物の外装にはカクパネルスー
                                               将来、企画室・アイディアセンターなどのスタッフが加えられる
                                                                                                                                              でパビリオンを建設することにした。当時の                       パー、屋根に住友瓦棒2型、壁にメタルラスが
                                               ことも考えられる。
                                                                                                                                              公式ガイドに以下の記述が見られる。                          使用された。                                            第 2
                                                                                                                                               「1970年は独立10周年になるので、日本                       近代館の円筒は直径7 ~ 8m ほどもあり、                          章
                                               組織変更にあたって、従来の統括部は廃止されて本社機構が設置
                                                                                                                                              万国博には特に力を入れています。アフリカ                       平面ではなく竹を斜めに切ったような形で                               「「
                                             された。従来の営業活動の枠組みを超え、さまざまな企画が誕生す                                                                   諸国では独立展示館を建てる数少ない国のひ                       あったため、作業時は命綱が欠かせなかった。                             鉄建

                                             る場として本社機構を育てていこうという狙いがうかがえる。大                                                                    とつです。展示館は国名にちなんで象牙を象                       また、想定外の場所に雨水が溜まり、完成後も                             「
                                             阪での営業組織は、本社とは独立した大阪営業所営業部という形を                                                                   徴するものです。高さ8m から30m の三つの                    度々補修を行った。                                         挑戦

                                             とった。




        122  ◆  ◆  ◆                                                                                                                                                                         THE 100 YEAR HISTORY OF E.KATAYAMA & CO., LTD.   ˗  ˗  ˗  123
   58   59   60   61   62   63   64   65   66   67   68