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1969 1978

     沿革編                                                                                                                                                                                                                                   沿革編

                                                                                                  E.K                                                                                                                         E.K
                         25                                                                                                                          26
             COLUMN-             カベラス、シートラスの教訓                                                                                           COLUMN-            情報システムの構築Ⅰ


                   1970年代までに、矢口産業の窓口商社は、                       矢口産業に異変が起こったのは、そのわず                                                             1970年代後半にはコンピューターが普及                      FACOM-V850を中心としたシステムを構築
                 当社と野崎栄蔵商店、中尾金太郎商店の3社                        か半月後のことであった。11月初旬に矢口産                                                            し始め、FA(ファクトリー・オートメーショ                      した。その最先端の機能に富士通も感嘆し、一
                 に絞られた。当社では富士波ラスシートから、                       業の手形が不渡りとなり、銀行取引停止処分                                                             ン)、OA(オフィス・オートメーション)が一                     般企業への導入事例を紹介する際、当社社員
                 利幅がよく、売れ行きも好調であったカベラ                        を受けて即日倒産したのである。事態を直前                                                             般企業においても注目されるようになった。                       が依頼を受けて講演を行ったこともあった。

                 ス、シートラスへの切り替えを進め、全国での                       に察知した当社は、全国でカベラス、シートラ                                                            そこで当社では、社員をコンピューター専門                       とはいえ、この時代にはまだ手書き伝票が業                              CHRONICLE
                 拡販に取り組んだ。その結果、3社のうちトッ                       スを大量に引き取り、矢口産業の工場から納                                                             学校に通わせるなど、業界でいち早く、さまざ                      務の主体であり、営業担当者が夜遅くまでか
                 プの販売実績を残した。矢口産業は当社に                         入した資材トタン板を回収するとともに工場                                                             まな使い勝手に合わせた独自のソフトウェア                       かってデュプロといわれる印刷機で伝票を手
     CHRONICLE
                 とって全国最大の大口販売先へと成長し、月                        の不動産を仮差押さえて権利を確定した。こ                                                             を自社で開発できる体制作りを進めた。                         書きしていた。                                           Ⅰ
                                                                                                                                                                                                                                            片山栄 そ と 一 時代 の
                 間300t を納品、売上は1社で月間5,000 ~                   のように、早期に行動を起こしたことで相殺                                                              1977(昭和52)年には大阪本社に初めての                      1982年には各営業所に FACOM-2770を
                 6,000万円規模に上った。                              を増やし、また債権を確保することができた                                                             コンピューターシステムとして、富士通のオ                       導入して分散処理を開始し、同時に出庫伝票
                   矢口産業も順調に社業を拡大し、1969(昭                     が、実損も少なくなかった。                                                                    フィスコンピューター・FACOM-BM を中心                    や請求書の発行を電子化して営業担当者の手

                 和44)年頃にはカベラス、シートラスの主力                         その後、1年程度で債権の回収が完了でき                                                            としたシステムが導入された。このシステム                       間を軽減した。データを統計・分析して営業
                 工場として総面積1,022㎡の奈良工場を、続                      たのは不幸中の幸いであったが、仕入先のみ                                                             では、売掛・買掛処理をするとともに、電話回                      戦略に役立てることができるようになったの                              Ⅱ
                 いて1975年10月には千葉県市原市に新工                       ならず亜鉛鉄板、カラー鉄板の大口販売先も                                                             線を通じて鋼材センターに情報を送り、出庫                       も、この時期からのことで、導入にあたって                               大阪 本全国 か へ 日 ら
                 場を完成させた。新工場の竣工にあたっては、                       同時に失い、川鉄鋼板からの仕入れが大幅に                                                             伝票を打ち出すこともできたが、まだ磁気メ                       は、富士通から講師を招いて社内勉強会を開
                 鉄鋼関連メーカー、商社、問屋などから多くの                       減り、大きな商圏が消滅することとなった。                                                             ディアが普及していなかった時代であったた                       いた。
                 招待客を招いて工場設備の見学会を開催し、                        窓口商社としての安定的数量責任という意味                                                             め、データの入力・出力には紙テープを用い
                 工場内に式場を設けて祝賀会を行った。祝賀                        でも、大変大きな出来事だった。                                                                  ていた。事務所には紙テープに穴を開けるた
                 会では矢口秀社長の挨拶に続き、住友金属工                                                                                                         めの穿孔機があったが、今日のシステムと比                                                                         Ⅲ
                                                                                                                                                                                                                                            片山鉄建 の 精神
                 業(2012年に新日本製鉄と経営統合し、新日                                                                                                       較するとまだまだ手間がかかるもので、省力
                 鉄住金株式会社に。2019年4月に日本製鉄                                                                                                        化に向けてようやく第一歩を踏み出したとい
                 株式会社に商号変更)から「今後も大切なお得                                                                                                        う段階に過ぎなかったと言える。
                 意先として全力で支援する」旨の祝辞があり、                                                                                                         その後、コンピューターの性能は飛躍的に
                 栄三社長が乾杯の発声を行った。                                                                                                              向上していく。当社は富士通とシステム開発                                                                         Ⅳ
                                                             矢口産業からの感謝状                                                                       に関する真剣な議論を積み重ね、1982年に                                                                         近年 の 片山鉄建








           1976年会社案内用の写真から

                                                                                                                                                                                                                                           第
                                                                                                                                                                                                                                           2
                                                                                                                                                                                                                                           章
                                                                                                                                                                                                                                           「「

                                                                                                                                              コンピューター導入の頃                                 仙台営業所での導入時                                       鉄建
                                                                                                                                                                                                                                           「
                                                                                                                                                                                                                                           挑戦







        136  ◆  ◆  ◆                                                                                                                                                                         THE 100 YEAR HISTORY OF E.KATAYAMA & CO., LTD.   ˗  ˗  ˗  137
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